双眼鏡を固定したまま見ることのできる範囲を対物レンズの中心から測った角度(°)のことを実視界といいます。
実視界が大きいほど一度に見える範囲が広がるため、対象を捉えやすくなります。
説明をわかりやすくするために、トイレットペーパーの芯で倍率1倍の双眼鏡を作ってみました(ただの筒です)。
3体のぬいぐるみを窓際に並べて、2mの距離から倍率1倍で眺めると次のようになります。
1つの視野に3つのぬいぐるみが見えています。
次に倍率を2倍(2分の1の距離まで近づく)にした写真をご覧ください。
倍率が2倍になると、中央の青いぬいぐるみは大きく見えますが、両隣のぬいぐるみは視野の外にはみ出してしまいます。
つまり、倍率が高くなると実視野は狭くなります。
広角の接眼レンズを使用すると実視野も広くなる
では、倍率を2倍にしたまま広角タイプの接眼レンズ(見かけ視界が広い)を使用すると、どのように実視野が変わるでしょうか?
広角タイプの双眼鏡を使用すると、視野円が広がる(見かけ視界が広くなる)ため、実視野も広くなります。
ただし、広角タイプの双眼鏡は周辺像が崩れやすいため、好みによって評価が分かれるところです。
実視界と混同されることがあるので、注意が必要です。
見かけ視界とは「双眼鏡をのぞいたときに視野がどれくらいの角度に開けているか」を表したものです。少々わかりにくいので、写真をご覧ください。
標準視野(標準的な見かけ視界)は50度とされています。接眼レンズに「広角タイプ」のレンズを使用すると、この見かけ視界が広がります。
広角と呼ばれる双眼鏡の見かけ視界は65度以上です。60度のものは準広角と呼ばれていますが、それでも広々とした印象を受けます。
同じ倍率で見かけ視界が広がると、当然、実視野も広がります(下の写真)。
見かけ視界・倍率・実視野の関係は次の式の通りです。
見かけ視界(°)÷倍率=実視野(°)
例えば、下の写真は8×42 実視野が7.5°の双眼鏡です。この双眼鏡の見かけ視界を求めてみましょう。
見かけ視界は、8(倍率)×7実視野(°)で計算できます。したがって、この双眼鏡の見かけ視界は56°であることがすぐにわかります。
標準よりやや広めといったところです。
見かけ視界の広い広角双眼鏡を使用すると、迫力のある像が得られます。
しかしながら、周辺像が悪化(ボケたり歪む)しやすいため、標準視野を好む人もいます。
私の個人的な印象ですが、50度の標準的な見かけ視界は「大人しい見え方」です。55度から見やすさが増して、60度の準広角でも充分迫力があります。
双眼鏡を固定したまま見ることのできる1000m先の範囲をmで表した数字です。実視界が角度で表現したものを別の表現で表しただけです。
海外メーカーの双眼鏡には「140m/1000m」という刻印が打ってありますが、これは実視野8度「field 8.0」と同じ意味です。
まとめると、実視野の表し方には角度(°)で表すときと、1000m先の見える範囲をmで表す2タイプがある、ということです。
実視野(°) |
1000mにおける視界 |
6.5 |
114 |
7.0 |
122 |
7.5 |
131 |
8.0 |
140 |
上の写真は1980年代末期に製造された、日本製の双眼鏡でアメリカ向けに販売されていたものです。
おもしろいのは、1000mにおける視界だけでなく、1000yds(約914m)における視界(430ft: 約131m)も併記されているところです。実視野は約8.2°です。
古い双眼鏡ですが、パワフルでシャープに見えるのと、見かけ視界が70度の超広角なため迫力があります。現在、この口径の主流はダハですが、ポロのカリっとした見え味が気に入って今でも愛用しています。
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